ゲーミングマウスの専門用語を初心者にも分かるようにまとめた。マウスを選ぶ上で非常に重要な要素なので、どれを買うか悩んでいるならここから学んでみるといいだろう。最初に簡単な表を作ったのでざっと目を通してぼんやりと頭にいれたら、下の詳しい説明を見れば分かりやすいと思う。7400文字(原稿用紙20枚分)という僕史上最高の文字数になってしまったので、短小説でも読む気分で目を通してほしい。いつもは読みやすいように画像を間に挟んだりもしているのだが、もはやこのクラスになるとあまり意味はないように思えるので省略している。
専門用語の簡単な解説
センサー | マウスをどれだけ動かしたのか測定する。 |
トラッキング性能 | 高ければ高いほどマウスを速く大きく動かしてもマウスポインタが思った通りのところにいく。単位はIPS。 |
解像度 | マウスを1インチ動かしたときに何回読み取るかの値。大きければ大きいほど、マウスを動かした分、ポインタが大きく動く。単位はDPI |
レポートレート | 一秒間に何回、パソコンに情報を送るかの値。 |
スイッチ | クリックするためのスイッチ。押し心地や耐久度に直結する。 |
加速 | マウスを動かす速さによって、ポインタの移動量を増やす機能。 |
直線補正 | マウス操作が直線からずれても、直線に引いたと判定する機能。 |
リフトオフディスタンス | マウスを持ち上げた時に反応しなくなる高さ。 |
ドライバレス機能 | ドライバなしでもDPIなどの設定をマウス本体に保存して、パソコンを変更してもすぐに自分専用の設定でプレイできる機能。 |
かぶせ持ち | マウスに手をかぶせるような持ち方で、多くの人はこれ。ふつうの持ち方。 |
つまみ持ち | マウスをつまむように持つ。マウスと手に空間ができるため、小さなマウスが扱いやすい。 |
センサーとは?
センサーはマウスの基礎となる部品。ここでマウス自体をどれだけ動かしたのかを測定する。より速く正確に計測できるセンサーが優秀ということになる。つまり、実際にマウスを思いっきり左右に速く振っても、いつも同じ場所にピンポイントでつくかどうかというのは非常に重要で、技術的にも難しい要素となる。現に一昔前は高速で動かすとズレるマウスが多かった。
この速く正確に読み取る能力のことを「最大認識速度」と呼ぶ。単位はIPSで、Inch Per Secondの略。1秒間にどれだけの距離を認識できるかを表す。200IPSなら1秒間に約5mの認識が可能となる。実際には5m動かすことはないが、高ければ高いほどセンサーとして優秀なことを示しているので、ひとつの指標にはなる。追従性能、トラッキング性能とも呼ぶ。センサーは距離を測るのにインチ法で計算する。日本人にはちょっと分かりにくいが、1インチは2.54cmなので約2.5倍センチと覚えておくといいだろう。ただし、IPSが高いからといって高速に動かしてもズレないか言われると、そうとは限らないのが難しいところ。それが加速、ネガティブアクセルと呼ばれるものだ。
加速とネガティブアクセル
マウスを高速に動かしたとき、ポインタが移動量よりも多く動いてしまうことを「加速」と呼ぶ。逆に移動量よりも少なく動いてしまうことを「ネガティブアクセル」と呼ぶ。加速の単位はG。マウスによっては最大加速30Gなどを記述しているメーカーもある。どちらもFPSなどのゲームをするときには不要なものなので、設定から切ることができる、もしくはないものが相応しい。加速やネガティブアクセルがあるかどうかの判断というのは意外に難しい。プロゲーマーのように正確なAIMを持つ人間はこの差に敏感になるが、一般人だと分からない場合も多い。最近は加速をハードウェア側(=物理センサー)で完全に切ることができるセンサーも開発されている。
DPIとは?
センサーにおける「解像度」とは、マウスを1インチ動かした時に読み取る回数。単位はDPIでDots Per Inchの略。400DPIなら1インチ動かしたときに400回読み取って400ドット分動かす。つまり、1600DPIなら1600ドット動かすので、400DPIの4倍大きく視点が動くということ。つまり、低ければ低いほどローセンシになり、高ければ高いほどハイセンシになる。昔のマウスは低DPIしかなかったが、現在は6400DPI以上にも対応している。FPSでは2000DPI以上はあまり使わないため、最高DPIはあまり気にする必要はないだろう。しかし高DPIでも安定して性能が出せるセンサーは優秀というひとつの指標にはなる。
様々なFPSをしたことがある人は分かると思うが、あまりにもDPIが高すぎるとゲーム内のマウス感度を最大まで下げてもまだハイセンシ、ということがよくある。だから多くのFPSプレイヤーは400DPIか800DPIの人が一番多く、高くても1600DPIくらいに収まる人が多い。だから400DPIと800DPIにおけるセンサーの安定性というのが一番重要になってくる。
DPIを50刻み、100刻み、極端なものだと1ずつ上げることができたりするマウスもあるが、400DPIか800DPI以外の中途半端な数字にするのはやめておいた方が無難だ。なぜかというと、ものによっては加速やネガティブアクセルが出たり、追従性能がおかしくなったりすることがあるからだ。基本的にセンサーというのはその物によって物理的に変更できるDPIに限りがある。基本的には400、800、1600、3200という風な倍数に設定されていることが多い。これはセンサーを開発するPMW Imaging社の前身となるAvago Technology社の時のセンサーから共通していて、このDPI指数が現在では標準になっている。この物理的にはできないものをゲーミングデバイス専門メーカーがソフトウェア側で無理矢理1ずつ上げることができるようにしているのだ。だから不具合が出やすい。333が好きだからといってそういった値にするのはリスクがあるよということだ。完璧なソフトウェアを作るというのは非常に難しいというのもあるが、ゲーミングデバイス各社のドライバなんて不具合出まくりの過去があるので、基本的に僕は信用していない。だからセンサーが本来持っている数字である400DPI、もしくは800DPIにすることを強くおすすめする。
超重要なリフトオフディスタンス
マウスを持ち上げた時にセンサーが反応しなくなる高さのことをリフトオフディスタンス(Lift Of Distance:LOD)と言う。これはマウスを選ぶ上でめちゃくちゃ重要なので絶対チェックした方がいい。これが長いとセンサーの反応を切るのに高く持ち上げる必要があるため、切り替え時に時間がかかる。だから一般的には短い方が使いやすいとされる。ただ、慣れという部分もあるので一概には言えず、ある程度長い方が使いやすいと思う人もいるので、自分にはどのくらいが合っているのか、慣れているのかを把握しておくといいだろう。新しく買ったマウスに慣れるというのは形状ももちろんそうだが、このリフトオフディスタンスに慣れるという要素が一番大きかったりする。ハイセンシだとAIMが超敏感なため、時間がかかるが、ローセンシだと時間があればわりとすぐに対応できるのだが、このリフトオフは別問題なのである。現在では世界最小クラスになると0.5mmのものまで存在する。
議論され続けるポーリングレート
センサーがパソコンに位置情報を1秒間に送る回数のことをレポートレート(ポーリングレート)と言う。単位はHz。基本的には125Hz、500Hz、1000Hzの3択だ。分かりやすいように秒になおすと、125Hzが8ms、500Hzが2ms、1000Hzが1msだ。1msが1000分の1秒なので、1000Hzは1秒間に1000回パソコンに位置情報を送っているということになる。現在は1000Hz(1ms)が主流となっていて、この設定で基本的には問題ない。しかし、ちょっと前まで1000Hzだとセンサーが安定しないということが往々にしてあったため、500Hzにして安定性を選ぶ人もいる。この500Hzか1000Hzかという論争は未だに解決しない問題としてずっと続いていて、もはやひとつのテーマみたいなものになっている。技術的にもっと安心できる日がそのうち来るかもしれないが、もし1000Hzで違和感を感じたなら500Hzに落としてみるのもいいかもしれない。ゲーミングマウスの初期のころは125Hzしか出なかったため、一応設定として存在するが今はあまり意味はない。
光学式とレーザー式
センサーには大きく分けて光学式とレーザー式がある。現在の主流は光学式で、安定した追従性能を誇る一方で、ややリフトオフディスタンスが長くなる傾向にあり、マウスパッドにも影響を受けやすいセンサーだ。ただし最近はレンズユニットの改良などもあってかなりLODも短くなりつつあり、マウスパッドにも最適化できるようなってきた。もうひとつはレーザー式だ。こちらは光学式に比べてリフトオフディスタンスが短く、マウスパッドに影響を受けにくい特徴がある。きちんと調整されたレーザー式ならば、追従性能は光学式に匹敵するが、ちょっと前まではドライバー側でうまく調整できなかったりと、あまり性能が安定しなかったため、現在はレーザー式のマウスは表舞台から消えてしまった。しかし、光学式がこれだけレベルがあがったのはレーザー式のおかげといっても過言ではない。基本的に現在主流で使われているセンサーはPixart Imaging社が提供する光学式のPMWシリーズだが、最近はLogicoolやSteelseriesがこれをもとに自社開発したセンサーもある。Razerは自社用にカスタムしたモデルを使うことも。
直線補正とセンサー位置
直線補正はヘッドショットラインをキープすることが容易になる一方で、斜めの敵や高い所にいる敵などを撃ちにくく、高低差に弱くなってしまう。だから多くのプレイヤーは直線補正を望まない。しかし、180度振り向いた敵にも正確なAIMをしたいならアリだとは思う。自分がどちらなのか、ゲームによって、自分の腕によって考えてほしい。センサー位置はマウスの真ん中が望ましい。ほとんどのマウスがそうなのだが、ごくまれに右や左に寄っているものがあり、やや感覚の違いが出てくるので注意。
センサー以外の要素
持ちやすさが一番重要
マウスは自分の手に合っているか、持ちやすいかが一番重要だ。これはセンサー性能が頭打ちになりつつあるという現状でもそうだが、昔からそうだ。どんなマウスが自分に合っているのかを知るためにはまず、自分がどんな持ち方をしているか知る必要がある。基本的にはかぶせ持ちかつまみ持ちの2種類だが、多くの人はかぶせ持ちだ。
そして大きいマウスか小さいマウス、どちらの方が自分に合っているかも知っておいた方がいい。一番いいのはヨドバシカメラやパソコンショップARKなどのゲーミングデバイスコーナーに行って、色んなマウスを触ることだ。そしたらどれが持ちやすいのか一目瞭然である。とにかく持ちやすいかどうかでAIMの良し悪しが大きく変わってくるので、自分の手にあったマウスを見つけることを最優先としよう。
・かぶせ持ち:マウスに手をかぶせるような持ち方で、多くの人はこれ。ふつうの持ち方。
・つまみ持ち:マウスをつまむように持つ。マウスと手に空間ができる。かぶせ持ちよりも縦の動きに強いが、細かい動きには弱い。
クリック感が変化するスイッチ
マウスの左右メインボタンは中に入っているスイッチによって押し心地や耐久性が変化してくる。粗悪なスイッチだと1回押しただけなのに何回も押した判定になるチャタリングなどの不具合が起きやすかったり、反応が悪くなったりする。
基本的に高性能なスイッチとされているのは日本メーカーのオムロンが作ったもので、型番によって耐久性能が違う。厳密には日本で作られたものと中国で作られたもの(CHINAの刻印あり)があるのだが、そこまで気にしなくてもいいと思う。とにかくオムロン製かどうかを確認するといい。
代表的なオムロン製スイッチ
・D2FC-F-7N=500万回(回数の記載がないので僕は無印と呼ぶ)
・D2FC-F-7N (10M)=1000万回
・D2FC-F-7N (20M)=2000万回
・D2FC-F-K (50M)=5000万回
その他のスイッチ
・RAZER製=オムロン製をベースとしたカスタムモデル、高耐久。
・SteelSeries製=オムロン製をベースとしたカスタムモデル、高耐久。
・Huano製=BenQ ZOWIEが主に採用。硬いと言われた時期もあったが今はそこそこ。
・TTC製=安価なのでよくサイドボタンに採用されている。
・KAIHUA ELECTRONICS製(Kailh)=安価でよくサイドボタンに採用。
・HIMAKE製=安価でよくサイドボタンに採用。
・無名ブランド、刻印なしのもの
RAZERやSteelSeriesはオムロンのカスタムモデルなので耐久性が高く、安心して使用できる。その他はぼちぼちでサイドボタンによく採用されている。あまり頻繁には押さないので安価なスイッチでもいいとは思うが、どうしても気になるなら自分で分解してオムロン製スイッチに交換することもできる。メインボタンが壊れた時も同様だ。またマウスの外側のプラスチック部分によっても押し心地や遅延速度が大きく変わってくるので、そこまでこだわりたいなら良質なマウスを見つける他ない。
クリック遅延について
中身のスイッチと、マウスの外側のプラスチック部分によってクリックした時の遅延速度が変わってくる。遅延が少なければ少ないほど反応速度がよくなってくるため、スナイパーをメインにする人などの中にはこだわる人もいる。しかし、これを調べるのはかなり大変で、ひとつひとつ検証していくしかない。別の記事で海外の人がまとめたものを日本人のために紹介しようと思っているのでそれを見てほしい。
ケーブル
有線マウスにおけるケーブルの柔軟性も非常に重要だ。昨今では優秀な無線ゲーミングマウスが続々と出ているだけに、有線マウスはケーブルがあるというだけで不利。だから柔軟で取り回しやすいケーブルにするという流れは加速していて、大手だとほとんどがそうなっている。もはや柔軟なケーブルは必須と言っても過言ではないのだ。硬いと使いにくい、引っ掛かりやすいと感じてしまう。なお、どうしても変更したい場合は分解してケーブルを換装することもできるようになっている。
マイクロコントーラー
マウスの基盤には制御チップ(メモリ)が入っていて、DPIやポーリングレートなどの設定を記録できる。つまりどのパソコンでも各社の専用アプリケーションなしで、つないだらすぐゲームをプレイできるわけだ。昔のRAZER製マウスにはなかったりもしたが、最近のゲーミングマウスにはほぼついているので安心していい。これをドライバレス機能といい、オフライン大会などで便利だ。高性能なマウスは32bit ARMが搭載されており、マクロなども細かく記憶できる。この部品はそこまで気にする必要はない。
ホイール
ホイールは指をひっかけて回す部品(ホイールそのもの)と、何回まわしたのか測定するホイールエンコーダーのふたつの部品から成り立っている。ホイールは個別に作られるので、マウスによって全く違うものになるが、ホイールエンコーダーはTTC製などある程度のメーカーが決まっている。ただホイールエンコーダーについては無名ブランドや製造元がわからないことも多々あり、その差異は大きくないように思われるので、ここでは主にホイールについて言及していく。ちなみにエンコーダーで一番よく使われているのはTTC製と思われる。
マウスを継続利用していく中で一番壊れやすいのがホイールだ。どういう構造をしているかで回す感触や耐久性が変わってくる。このホイールのデコボコしている部分をノッチと呼ぶのだが、これがマウスやメーカーによって変わる。基本的には1回転が24回刻みのことが多いが、BenQ ZOWIEなどのメーカーでは16回刻みの場合もある。一回一回がしっかりと刻めるかわりに硬いホイールなのか、やや柔らかくて境界線が分かりにくいホイールなのか、好みが分かれるところではあるが、個人的にはしっかりとした感触のホイールをおすすめしたい。なぜなら経年劣化によってホイールを下に動かしたのに上の判定になったりすることが往々にしてあるからである。ゆるいホイールだとこれが起きやすい。硬ければ使っていくうちにゴムやプラスチックの素材が擦れて柔らかくなっていくが、元々柔らかいと誤作動を起こしやすくなるというわけ。ちなみにロジクール製には高速回転できるホイールもあり、それは経年劣化の心配がないので、ひとつの完成形とも呼べるかもしれない。
表面加工
表面加工もマウスやメーカーによって細かく変わってくるけれども、大きくはつるつる、もしくはざらざらの2タイプに分かれている。どのマウスも滑り止め加工として表面処理をしているのだが、それがつるつるの鏡面加工か、ざらざらのマット加工かになる。素のプラスチックに近いつるつるタイプは手汗をかかない人にとってはベストな選択になり、手に吸い付くような感触となる。逆に手汗をよくかくひとはつるつるだと滑ってしまうのであまり向かない。だからざらざらの表面を選んだほうがいいかもしれない。どちらにしろ好みはあるけれども。僕は汗をかかないタイプなのでつるつるの表面が好き。
バックライト
RGBバックライトはゲームプレイには直接影響はしないものの、使用者のテンションを上げるのに一役かっている。マウスには比較的多くの製品が対応しており、1680万色に対応したモデルが多い。ロゴ部分やホイールなどが光るので暗所でも位置がわかりやすく、プレイ中に光っているので気分が上がる。キーボードを打っているときが一番実感が湧きやすいだろう。この機能を搭載することでどれだけ重量が増えるのかはわからないが、微々たるものだと思うのであった方がいいとは思う。ただ無線マウスの場合は重量の問題に加えて電池持ちが減るという問題も存在するため、無線の場合はなくてもいいと言える。
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